2018年7月4日と5日の2日間、ベルサール汐留では、世界のトークンエコノミー・ブロックチェーンプロジェクトが集結する「TokenSky TOKYO 2018」が開催された。ブロックチェーンに関する様々な機会・問題について世界の著名な経済学者・教授・投資家・事業家などの有識者や専門家によるプレゼンテーションが多数おこなわれた。
中国と日本の仮想通貨・ブロックチェーン業界の勢いの違いを肌で感じてしまったイベントというのが率直な感想である。本稿では主催団体について最初に取り挙げ、日本の仮想通貨規制の最新状況について登壇した弁護士の増島氏、その日本の仮想通貨規制状況でのASOBI COINプロジェクトについて登壇したアソビモ社近藤氏、最後にAppBank社マックスむらい氏の講演をレポートする。
dAppsゲーム最新事情について登壇したdAppsゲーマー・ブロガーである キヨスイ氏の話も大変興味深く、イーサエモン、Bitguild、Axie Infinity合わせ 別の機会に紹介したい。
誰が開催したの?
主催:TokenSky組織委員会 & ASOBIMO & CSDN
– TokenSky公式ページより
TOKENSKY組織委員会って?
TOKENSKY組織委員会は、Shangfang Media(証券コード:835872)が後援している、ゲーム業界で10万人以上の出席者が集まった大規模な会議や展示会を開催した実績のあるプロの集団
– TokenSky公式ページより
Shangfang Media って?
「方传媒 (Shangfang Media)」で、社名は 「北京上方传媒科技股份有限公司」とあり同社の「上方网」メディアサイトでTokenSky TOKYO 2018の特集ページがあった。同サイトに TokenSky組織委員会会長/TopChain説立者 張秋水(Zhang Qiushui)氏 のインタビューが掲載されていた。
2018年5月21日に CosplayToken でアドバイザーにも就任している焦光明(Jiao Guangming )氏のプロフィールにはShangfang Media社長とあり本イベントでもTop Foundation& Top Chain設立者として登壇した。また、アソビモ社 ASOBI COIN プロジェクトのアドバイザーに掲載されている 王紫上(Wáng Zǐ Shàng)氏 は TOPMEDIA (Shangfang.cn) Chairman of the Board という肩書。
CSDNって?
中国最大のIT News、China Software Developer Networkのこと。
ASOBIMOって?
アソビモ社はスマートフォン向けMMORPGアヴァベルオンラインなどで有名な日本のゲームデベロッパー。FINTIDEでも紹介しているASOBI COINプロジェクトを行っている。
日本を除く他の国でICOを展開し日本にトークンを持ってくるということを真剣に考えなければいけないタイミングなのではないかという風に思っている – 増島氏
日本の仮想通貨規制の最新事情について登壇したのは 森・濱田松本法律事務所の弁護士 増島雅和氏。
最新状況の資料は氏のSlideShareを見てほしいということで紹介しておく。>>こちら メイン会場が埋まり海外の方も含め関心の高さが伺える。増島氏の経歴、肩書は 前述のSlideShareで確認して欲しい。スタートアップ企業を支援する立場でもあり仮想通貨・ブロックチェーン団体にも関わるほぼ中の人に記者としては見えてしまうが実際はそう簡単では無い事情が聞けたので、氏の熱いメッセージとともにそのままお伝えしたい。講演自体にスライドは無く筆者の速記によるものなのでニュアンスの違いなどはご容赦願いたい。
日本の仮想通貨規制の状況は混沌としている
- 海外の方から日本のクリプトの規制は今どうなっているのかという問い合わせをいっぱいいただいている
- 日本はクリプトの規制を先行してスタートしてビジネスをやりすくなったはずだがコインチェックの一件でそれが反転した状態
- 登録業者に改善命令が出され、みなし業者は撤退すべき人は撤退し全体的に歯車が逆回転している
- 大きなところでいうと適正な事業者に適正にやっていただきたいという状況で事業者さんの整理がひととおり終わり海外事業者でライセンス持たずに日本でビジネスをやろうとしている方々に対して一定の牽制を打ち、この辺りのフォローアップをしている
- 金融庁は7月から年度が変わり新しい体制で仮想通貨行政を見ていく
- 仮想通貨のルール決めは自主規制機関が重要だが 2機関あったものが1つの新しい団体※1になりこれから自主規制の内容が出てくる
- 自主規制の内容は分別・管理・決済等厳格なものになる
- スタートアップ事業者がラインセンスを得たいという際に厳しいものになっていく
- 海外事業者の方に「日本はアイソレート(分離)したマーケットだ」という言い方をされた
日本ブロックチェーン協会(JBA)
日本仮想通貨事業者協会(JCBA)
の2つのことであり、新しい自主規制団体は
日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)
のことである。
2018/06/26 日本ブロックチェーン協会「新代表理事就任を受けて肥後彰秀からのご挨拶」 記事からの抜粋
仮想通貨交換業を営む事業者の集う団体である、日本仮想通貨交換業協会の設立及び始動により、仮想通貨交換業にかかる自主規制のテーマは同協会にて主に取り扱われるものと考え、日本ブロックチェーン協会では、改正資金決済法が定める「認定資金決済事業者協会」となることを目的から外し、改めてブロックチェーン技術を活かした産業振興に立ち返り、取り組んでまいります
混沌要因は日本の状況これからどうなりますかという時に一体誰に聞けばいいのかが見えないこと
- 仮想通貨行政は金融庁であり、研究会※2 を開催しており報告書を出し、この報告書のシナリオで全体を進める形になっている
- ICOが典型だが絵が描ききれない中で仮想通貨行政をやっており、金融庁が全体を把握、理解をして進めているわけでもなく、事業者を集めた自主規制機関も全体を描きながら業界をリードしている状況でもない
- 全体を率いている人が居ない中空な状態を漂っていると思っている
仮想通貨交換業等に関する研究会のことと思われる
金融商品に仮想通貨があたるというのは知る限り既定路線ではない
- 金融商品に仮想通貨があたるという方向性みたいなものが出てきてしまう状況※3になっているが、知る限りでは既定路線ではない、事業者団体の研究会でもそういった意見はなく、金融庁でも否定している
– 産経新聞 2018/07/03 「仮想通貨規制の移行を検討 改正資金決済法から金商法へ 利用者保護を強化」
日本のトークン関係者に言いたいことは制度がどうとかはあまり関係ない、不合理だと思うなら早く外に行けばいいということ
- 立場としては自主規制機関が出すルールに沿ってライセンスの準備等々をしていく
- 自主規制機関のルールではまだICOについてはあまり定まっておらず引き続き不透明な状況が続く
- 日本の事業者の典型 どうすんだ何をすればいいんだ というのは スタートアップセクターとしての我々としては何を甘えているんだと思う
- 中国自身は仮想通貨取引もICOも全面禁止だが香港にエンティティ作って香港でICOする、ビジネスをデベロップして日本に上陸するということをやっている
- 他の国でビジネスをする立場では中国と一緒であり日本は取引所があり日本に進出するというのはルール上可能でありむしろ中国より有利といえる
- 現実は中国のクリプト業界が世界を圧倒している
- 残念ながら年の功が物を言いクリプトを支えようとしている僕らの年代はあまり力が発揮できておらずそこの点についてはご迷惑をかけていると思っている
日本のトークンエコノミーを信じる人達へのメッセージ
クリプトの領域を本当に信じているのであれば是非世界に出てそこで軍資金を蓄えて日本に上陸する。日本のICOが仮にどうなろうとも日本の取引所にトークンを上場させるということはできる。日本を除く他の国でICOを展開し日本にトークンを持ってくるということを真剣に考えなければいけないタイミングなのではないかという風に思っている。
中略
世界戦に起業家の方々が一人でも多く残れるようにしていただきたいしそれができるように日本の規制の方をなるべく頑張りたいと思っているが同時平行でヘッジをかけて世界戦を戦える準備をしていただきたいと思っている。
TokenSky の本筋では無いかもしれないが日本の仮想通貨規制事情の空気感が伝わる講演であった為取り挙げた。では日本の事業者はどんな戦略なのか、続いてアソビモ社の「ASOBI COIN」について近藤氏の講演を紹介する。
「ASOBI COIN」は ICOではなく上場については一切コメントしない – 近藤氏
アソビモ社近藤氏が最初に念を押すように言った言葉が「ASOBI COIN はICOではない」であった。
ASOBI COINの詳細については Whitepaper が一番詳しく正しいと思われるのでそちらを紹介しておく。>>こちら 近藤氏の言葉をなるべくそのままお伝えしたいが、こちらも筆者の速記によるものなのでニュアンスの違いなどはご容赦願いたい。
「ASOBI COIN」は現時点では仮想通貨ではなく前払式支払手段、なおかつKYC付与
- ASOBI COIN は一言で言うとデジタルコンテンツ革命である
- 日本なのでいろいろとややこしいところがある
- なんでアソビモさんは日本でICOやってるんですか?と言われるが、これはICOではないと言わないといけない
- 何回も金融庁に行ってどういう風にすればこのがんじがらめの日本でICOがやれるのか考え、いろいろ打ち合わせ、議論し、結論として1つの方法を見つけた
- 本当は言いたくなかったがあまりにも質問が多いので言う
1. 法定通貨での購入ができる※4
2. 今の時点ではゲームでの利用価値が固定されている
というこの2点が大きなポイントとなって現在では前払式支払手段の範囲であって仮想通貨ではない- 我々のコインが上場するんですよとか言っちゃいけない
- 上場に関して聞かれるがこれについては一切コメントしない方針
- 前払い手段なので国内の販売は可能であり、なおかつKYCを付与
- 海外からしたらこれはどうみたってICOじゃないかという風に言われますんでKYCはちゃんとやる、という風な方針で今やっている
- これは金融庁に何回も行って一定の結論を得たというものになる
ASOBI COIN の購入は、日本円、ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュで可能
「ASOBI COIN」とはデジタルコンテンツのメルカリ・ブックオフである
- 出版社の人と話してもブックオフは大嫌いという、なぜならブックオフで売れても収入にならないから
- 私も本を出しているが中古で売買されても印税は入らない、これはなんとかならないかとずっと思っていた
- デジタルコンテンツの保護流通プラットフォーム
1. デジタルコンテンツの保護システム
2. デジタルコンテンツの流通プラットフォーム
この2つでできており、テクニカルなところ、ビジネスモデル的なところ両方とも特許を申請している- 今回われわれの仕組みはトランザクションの処理のタイミングでスマートコントラクトが書き込んであるため自動的に分配される
- 200円払ったら売り主100円、出版社70円、著者には30円入りますとなる
- 我々のコインの大きな特徴はデジタルコンテンツの中古流通市場で使えることだが、売買ができるようになるにはプロダクトが完成しなければならず年末を予定している、そこまで待つのか
- 多くのICOを見て、研究してきたがほとんどのICOは今の時点で使い道がない
- プロダクトができるのは3年後みたいな話なんでみんな上場したあとだんだん下がるというのが一般的だと思う
- 我々はすぐに使えるという特徴がある、どこで使うかというと我々の配信しているゲームですぐに使えるという風な利用価値を持っている
- もちろんこのコインを使う会社はどんどん増やしていく
- アソビモ開発ゲームの月間アクティブユーザは1000万人以上に上りこういったゲームの数々で対応していく
- 今は上場しない、値段も変動しない
- 何らかの理由で価格が変動するようになったらどうするんだとたまに聞かれるのであえて言っておく
- コインの2倍の価値でゲームで使える、必ず2倍の価値で使え、常に得する状態で使えるとどうなるかというとゲームユーザがGooglePlayやAppleStoreで買うよりもこっちで買ったほうが半額で買えるわけでこっちに買いに来るという話
- 多くのICO見てると買い手はいない、そりゃ下がる
- 我々は上場に関して一切コメントできないがこのへんは察していただきたい
- ストアで買うより常にお得な状態になっているということ
「ASOBI COIN」の特徴は『問題解決としてみんなが便利になる』『今すぐに使えるコイン』『国産』
- いろんなプロジェクト見てきたがそのほとんどがブロックチェーン使わなくていいんじゃないかというものが多い
- 我々のプロジェクトはブロックチェーン使わないと絶対できない
- 大きな問題解決としてみんなが便利になる
- ダウンロードして遊ばなくなったゲームを中古で売りたいと思うが今は売れない、これが売れるようになる
- 今は0だが5年後10年後に1兆円2兆円規模になるマーケットをこれから作りますよということ、これを世界にも拡げていく
- そして今すぐに使えるコイン、買い手がたくさんいるコイン
- 何よりも国産のコインだということ
- 中国やロシアのコインがたくさんあるが我々は池袋にあるということ、発行体はエストニアにあるが池袋でやってる
前述の増島氏のレポートと合わせASOBI COIN プロジェクトの戦略理由の一端がおわかりいただけたと思う。今後不透明な部分があるにせよ、アソビモ社の強みを最大限利用し、あくまで日本を向いていると言える。
ASOBI COINはこの日 プレセールSTAGE1が2018年07月04日15時から開始された。
2018年07月10日 11時 に 16日までの予定で開催していたプレセールSTAGE1が早期完売したことが発表された。
2018年7月20日15時00分より、プレセールSTAGE2を開催する予定 とのこと。
2018年6月29日から順次 アヴァベルオンライン上での AirDropイベント「AVABEL SUPER FIGHT!!」が開催されている。
また、鷹の爪で知られる株式会社ディー・エル・イー投資部門がプライベートセールに参加しており、同社との戦略的な提携が発表された。
続いて最後に、日本における仮想通貨との関わり方の例として「@BLAST」プロジェクトについてAppBank社マックスむらい氏の講演を紹介する。
仮想通貨一般普及の鍵はゲームやエンタメのコミュニティで使われるようになるかどうか、そのきっかけは「@BLAST」- マックスむらい氏
初日のラストに登場したのは、AppBank株式会社CCOのマックスむらい氏。2018年6月13日からスタートした「@BLAST」で実現したい世界について語った。
イベントを通じて仮想通貨を配布
@BLASTとは、ゲームや各種エンタメ、イベントや放送を通じてそこに参加するユーザーに仮想通貨を配布するサービス。仮想通貨は賞品としてイベントに協賛してくれた会社から提供されるというもの。現時点ではGACKTコインとしても有名な「SPINDLE」と本イベントを主催するアソビモ株式会社の「ASOBI COIN」と提携しているそうだ。
7月28、29日にはAppBank株式会社の子会社であるポーカーポーカー株式会社の「ポーカーポーカー」の大会ではゲーム参加者に賞金1000万円相当の「SPINDLE」を配布するという。
仮想通貨を配布する三つの狙い
なぜ仮想通貨をイベントの賞品として配布するのか?マックスむらい氏は仮想通貨を配布する狙いについて以下の3点を挙げた。
(1)仮想通貨のプロモーション
世界に1700種類以上の仮想通貨があるが、現在は効果的なプロモーション手段がなく、そのほとんどは埋もれてしまっている。イベントの賞品とすることで、その仮想通貨のプロモーションの一端を担うことができる。
(2)仮想通貨のホルダーやファンの増加
仮想通貨をたくさんの人が持ち、ファンが増えることでその仮想通貨の価値が高まる。
※エアドロップのように単に誰にでも配布するのではなく、イベントに参加してくれた方に配布する。この意味の違いは大きい。
(3)仮想通貨の出口戦略のひとつ
現状@BLAST上においても、イベントでもらった仮想通貨には使いみちがない。使える場所があってこそ、仮想通貨の価値は向上する。仮想通貨の価値向上のために、イベントを通じてユーザーを巻き込みながらひとつの仮想通貨の使いみちを提供していきたい。
仮想通貨の現在と未来をつなぐ架け橋となりたい
マックスむらい氏自身は、YouTubeというプラットフォームで自己実現をし夢を叶えてきた。それと同じように@BLASTと仮想通貨を組み合わせて多くのユーザーの自己実現を助けたい、彼らが夢を叶える瞬間を@BLASTの中で見ていきたいのだという。
「仮想通貨が一般に普及するための鍵は、仮想通貨がゲームやエンタメのコミュニティで使われるようになるかどうか。そのきっかけを創るのが@BLASTである。」と確信めいた表情で語っていた。
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◆開催概要◆
名称: TOKENSKY TOKYO
日時: 2018年7月4日(水)- 7月5日(木)両日 9:00〜18:00
会場: 東京・ベルサール汐留
テーマ: アジア最大級のトークンエコノミーとブロックチェーン業界向けイベント
内容: カンファレンス・セミナー、及び出展社ブース
主催: TokenSky組織委員会 & ASOBIMO & CSDN