疑惑が再燃する仮想通貨のテザー、疑惑が鎮火しないのはなぜか

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疑惑が再燃するテザー、疑惑が鎮火しないのはなぜか

仮想通貨、ステーブルコインのTether/テザー(USDT)に対しまたも疑惑が再燃している。

裏付け資産の構成を説明する文章にいつの間にか「関連会社を含む第三者への貸付金からのその他の資産および債権を含むことがある」という一文が追加されていた事が起因だ。

ただ、この一文だけに関して言えば疑惑が再燃とするには弱い火種と言わざるをえない。事実、今回のこの一文に疑惑再燃と反応しているまともな投資家はいない。せいぜいが相変わらずの不透明さを指して『だろうね』という反応であろう。後手に回った下手な対応であることは確かだが。

テザーのビジネスモデルを考えたときに思い浮かぶのは銀行モデルだ。銀行は預金者の預金のうち準備金として一部のみを残し他は貸し付けなどの運用に回すことによる金利差による利ざやで収益を上げている。

もし火種として問題となるとするなら「貸付金、債券、その他資産」が法定通貨ないし“現金同等物”で構成されているか?が否であった場合、さらには預けられた準備金の資金流用が利用者との契約の範囲であったか?とするべきである。

出典:テザー公式より
100%バックアップ
すべてのテザーは、従来の通貨および現金同等物を含む当社の準備金によって常に100%支えられています。また、時折、Tetherが関連会社を含む第三者への貸付金からのその他の資産および債権を含むことがあります。 すべてのテザーも1対1でドルに固定されているので、1 USD USDは常に1 USDでTetherによって評価されます。

引用:Tether公式
引用:Tether公式

Tether/テザー(USDT)は、法定通貨のUSD(米ドル)と連動(ペッグ)した仮想通貨(ステーブルコイン)で、米ドルの価格に連動させるべく、USDT発行額に相当する米ドルを発行元が保有をうたっている。

公式サイトには確認可能な範囲で元々、「法定通貨・現金同等物」とあった。(それ以前に「米ドル⇒法定通貨」だったとの指摘もあるが不明)法定通貨は現金、現金同等物(※1)とはいわゆるキャッシュでキャッシュフロー計算書に記載されるような短期貸付・定期預金・預金・公社債などがある。

※1
 現金:法定通貨
 現金同等物:預金、定期預金(3ヵ月)、公社債投資信託、などのキャッシュ
 現金等価物:受取手形、売掛金、などキャッシュと同じ価値があるもの

この表記を今回、テザーは100%法定通貨・現金同等物での保有ではなく、「Tetherが関連会社を含む第三者への貸付金からのその他の資産および債権を含む」と認めたことになる。

テザーがバックアップする準備金の構成比率が預金と、準備金の預金金利だけなら良かったのだが、貸し付けや債権“その他資産”とまで表記されるような資産範囲として区別できないものも含まれるとなると大分状況が違ってくる。

今回の事で、昨年10月にブルームバーグが報道した銀行取引の明細を突き合わせての金額調査も、入り口の話であり、その後の内部や出口付近での資金移動については不透明感が増したことになる。

テザーのビジネスモデルの正確なところは不透明なため分からないが、準備金をナローバンク的な状況下で、国債など低リスクな状況下で運用することは何ら不思議なことではない。むしろ、ただ黙って準備金を預かるだけの方が金融に少しでも長けた人からすれば不思議に思うだろう。カストディアン業務を行う銀行と提携している、買収した等の伝わってくる情報への納得感も高い。

問題があるとしたら、預かった準備金を、不透明なまま、外部への貸し付けに流用している可能性の点だろう。
関連会社への貸し付けに対する利子の返済や債権の実態も不明だ。準備金の比率が「現物1:信用9」だとしたら恐ろしいレバレッジを利かしたハイリスク運用ということになる。テザーの実態が運用商品なのだとしたら、ステーブルコインを証券とする可能性の議論に、大きな影響が出てくることも考えられる。

貸し付けや債権には、どれほど低リスクでも焦げ付くリスクがある。融資審査の甘さなどローンの焦げ付きから起こる金融ショックの歴史は枚挙にいとまがない。そこに投資契約性が出てくるとすればなおさらだ。

テザー疑惑は「裏付け資金」「価格操作」とあったが、ひとつの疑惑が晴れたとしても別の疑惑が再燃するだけだろう。今までの疑惑とこれからの疑惑すべてに共通する火種とは信用不安だ。テザーには致命的なまでに信用がない。トラストレスをうたうブロックチェーンでこれほど信用が無いのも皮肉である。

実のところ歴史的に見れば、金本位制度の時代をはじめ100%の準備金を保持していた国家や中央銀行はあまり例がない。ほとんどの国が、一部の準備金のみを確保しそれ以外は流動的な資産運用の状況下にあった。というか現実問題として規模の拡大に対して現物対処に無理が出たからだ。それでも問題とされなかったのは信用である。

100%の裏付け資産を疑われているテザーについても、初めからブロックチェーンの外の信用が第一と理解してUSDTを発行してきていれば、準備金との構成比率を適切に開示すればよいだけで、疑惑が付いて回る事もなかっただろう。というかそこの仕組みこそをブロックチェーン上に実装すべきであった。もしかしたら、テザーが燃え尽きるまで疑惑が晴れることはないかもしれない。

[参考]
テザー公式

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