ステーブルコイン分野で最大のシェアを誇るテザー社が、USドル、ユーロに続き、中国以外で使われるオフショア人民元(CNH)に価値を固定(ペッグ)したステーブルコインを発行することを発表した。
約42億ドル(約4500億円)発行している米ドルにペッグしたUSDTや、約4000万ユーロ(約47億円)発行しているユーロにペッグしたEURTに続き、3つ目のステーブルコインとなる。
Offshore Chinese yuan (CNH) added to our basket of supported currencies, new stablecoin CNHt now available!
CNHt is pegged to CNH and is available on the Ethereum blockchain as an ERC-20 token. https://t.co/MEWUw171ky pic.twitter.com/R7lN7ADPFb
— Tether (@Tether_to) September 9, 2019
テザーが発行するステーブルコインはOmni版、イーサリアム版、Tron版、EOS版、Blockstream Liquid版など各種ブロックチェーン構造に沿って発行されているが、CNHにペッグしたCNHTはまずはイーサリアム版ERC-20規格で発行すると発表している。
中国の中央銀行がステーブルコインに注目
中国の中央銀行は人民元の国際的な通貨地位を高めるため、中央銀行が発行するデジタル通貨を前向きに検討している。リブラの詳細発表後、特にその動きが激しくなっていることがバイナンスリサーチでも報告された。そのレポートでは、中国政府は5年前からデジタル通貨調査チームを発足しており、リブラの詳細発表後には発行が近いとする中国政府高官の発言も引用されていた。
裏付け資産の透明性をめぐって様々な疑惑が出ており評判が良いとは言えないテザー社だが、一度シェアを拡大したテザーの牙城を崩すのは容易ではない。しかもUSドルペッグ通貨として業界最大のノウハウがあるだけに、人民元ペッグ通貨も大手取引所で取り扱いが開始されれば大きな需要があることが想像される。
こういったテザーの状況は、独自のデジタル通貨発行を急ぐ中国政府関係者の目にもあまり良くは映っていないはずだ。このままテザーのCNHTは発行され順調に発行額を増やしていけるのか。この辺りにも注目しながら人民元テザーに注目していきたい。
参考:Tether Now Supports Offshore Chinese Yuan (CNH), Launches CNH? Stablecoin