イーサリアム(Ethereum)がPoWの一部をPoSに切り替え予定、GMOインターネットがマイニング特別損失計上、ビットメイン(Bitmain)が従業員を50%解雇など、PoWを巡るマイニングにかげりが見えてきています。
PoWのデメリットは、主に、電気料金とマイニングマシンコストです。マイニングマシンは、すぐに新しいASICマシンがでてきて、生産率の悪い古いマシンはすぐに入れ替えられていました。
それでもPoWでマイニングする理由は、1ブロックのマイニングに成功した時の収益が大きいからです。
現在、1ブロックのマイニング報酬が12.5BTCなので、分かりやすく1BTCを約40万円と仮定すると、マイニングに1回成功すれば、500万円の収益になります。
約10分に1ブロック生成されるので、1日で約144ブロック生成(24時間 × 60分 / 10分)され、マイニング報酬は、約7.2億円/日になります。もし、ハッシュレート分布で10%獲得していれば、14ブロック/日となり、1日の報酬はおおよそ約7,000万円と計算できます。
しかし、ハッシュレートを10%獲得するのも簡単ではありません。いくつものASICマイニングマシンを稼働させる必要があり、ファーム代(土地代)、電気代、人件費などの負担があり、今後、半減期を迎えると収益は減ることになります。
手数料収入があるため、収益がなくなるわけではないのですが、BLOCKCHAINのデータによると、現在の1日の総手数料は約1,000万円です。ハッシュレート分布で10%獲得していた場合、単純計算だと1マイナーが得られる報酬は約100万/日で、マイニング報酬にはおよびません。
※手数料はマイニングしたブロックによって異なります。
もし、マイナーの収益が半減期により、損益分岐点を下回ることになれば、マイナーは市場からの撤退し、PoWが機能しなくなる恐れがあります。
半減期に対する対策は?
PoWが機能するには、マイナーが必要で、マイナーを獲得するためには報酬が必要ですが、現時点では、半減期に対する対策は特にありません。
半減期でマイナーが減ると、「ブロックが生成できなくなり価値がなくなる」「51%攻撃が容易になる(信頼性がなくなる)」などの問題が考えられます。
しかし、マイナーが減れば、残った側にとっては、報酬や手数料を獲得できるチャンスが上がり、新たな市場参入を促し、一定数を保つのではないかと考えられています。実際に、昨年のビットコインクラッシュでは、多くのマイナーが撤退しましたが、その後ハッシュレート分布が均等になり、ハッシュレートも上がってきています。
そして、51%攻撃が容易になってしまう点に関しては、攻撃した側が奪ったコインの価値を下げる行為でもあるため、労力に見合う報酬を得られなくなることが考えられ、可能性は低いと思われています。
つまり、そのままでもうまく回るのではないかという見方があり、早急に対策を講じる段階にはありません。
供給量撤廃論
しかし、一部コミュニティメンバーは、対策を検討しており、最近行われた「Satoshi’s Roundtable」というイベントで、2,100万というビットコイン供給量のキャップをはずす提案をしました。
半減期がきても報酬が減らなければ、マイナーも撤退せず、安定して稼働することができるというものです。しかし、そこまでして、ビットコインを延命するべきではないという反対意見もあり、実現するかはわかりません。
どうなるPoW
ビットコインのPoWは、ブロックチェーンによる初の通貨という希少性から、生き残る可能性はあります。最後のビットコインのマイニングは2140年頃になるため、今関わっている人たちが、その最後を見届けることはできません。
しかし、次の半減期は来年(2020年)にせまっており、何かしらの変化があるかもしれません。今後、PoWがどうなっていくのか、マイナーやコミュニティの動きに着目していきます。
参考:BLOCKCHAIN