むかし、むかし、あるところに、とある理由で妖怪界を追放されてしまった一匹の「河童」がいました。人間社会で強く生きていくことを決めた河童はおもむろに仮想通貨に興味を抱き、仮想通貨取引所の口座を開設しようとしたり、仮想通貨関連のニュースを読み漁ったりしていました。そんな河童は今回、一般社団法人の新経済連盟が金融担当大臣宛に提出した「暗号資産の新たな規制に関する要望」に目を通してみました。
相変わらずどこか上から目線の河童。
意外としっかりプレスリリースの文面を読んでいる真面目な河童。
1.投資型ICOについて/「第一項有価証券」となる対象の明確化
【金融庁が提示した規制案】
トークン表示権利は、事実上多数の者に流通する可能性があるため、金融商品取引法における「第一項有価証券」と同様に整理する
【これに対する要望】
トークン表示権利を一律に「第一項有価証券」と同様に扱うのではなく、権利の移転に制限がかかっているなど、事実上多数の者に流通するとはいえない場合においては「第二項有価証券」と同様に整理することを可能とすべき
2.決済型ICOについて/発行体と交換業者の責任の明確化
【金融庁が提示した規制案】
ICOトークンを取り扱う仮想通貨交換業者に対し、「発行者に関する情報、発行者が仮想通貨の保有者に対して負う債務の有無・内容、発行価格の算定根拠等」に加え、「発行者が作成した事業計画書、事業の実現可能性、事業の進捗等」の情報についても、顧客に提供することが適当。
【これに対する要望】
事前の情報開示、事後の継続開示、適時開示などについて、「発行体」と「交換業者」の責任を明確化すべき。発行体が主たる情報源であるため、問題があった際の交換業者の責任範囲を限定するなど、交換業者の責任が過大とならないよう留意すべき。
3.カストディ業務について/規制対象となる範囲の明確化
【金融庁が提示した規制案】
カストディ業務について、業規制の対象とし、仮想通貨交換業者に適用される顧客の仮想通貨の管理に関する規制を適用
【これに対する要望】
実務上「カストディ業務」は様々な形態のものが存在するため、規制対象となる業務の範囲を明確にすべき
4.デリバティブ取引について/第一種金商業による取り扱いの実現
【金融庁が提示した規制案】
仮想通貨デリバティブ取引は、他のデリバティブ取引と同様の業規制(金商法)を適用することが基本
【これに対する要望】
第一種金商業者が現物仮想通貨の引き渡しを伴わない仮想通貨デリバティブ取引を取り扱う場合には、仮想通貨交換業としての登録を経ることなく第一種金商業の範囲内の業務として行うことができることとすべき
5.その他(税制について)/申告分離課税や損益通算等の適用
【税制に関する要望】
暗号資産の市場を拡大しイノベーションを後押しする観点から、税制が暗号資産への投資の阻害要因とならないようにするため、以下のような措置を講じることを検討すべき
(1)総合課税から、申告分離課税への変更(税率20%へ)
(2)仮想通貨間の交換は非課税とする
(3)損益通算や損失の繰越控除を可能とする
最後に今回の要望を読んで河童が見出した「暗号資産の規制における行動規範」通称 “河童五則” をご覧ください。
一 ざっくり規制するな!細かく規制しろ!
二 何でもかんでも既存の規制の枠組みに収められると思うな!
三 内容を吟味して規制すべきものと除外すべきものを明確にしろ!
四 規制を作るのに手抜きをするな!全力で考えろ!
五 スピードスケートにフィギュアスケートのルールを適用するな!
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一番最後のはよくわかりませんが、河童も河童なりに思うところがあったようです。さてさて、今回提出された要望はどのくらい実現するのでしょうか。その動向にも注目していきましょう。