1月30日と31日の2日間にわたり、横浜にあるパシフィコ横浜でアジア最大のブロックチェーンカンファレンス「ジャパンブロックチェーンカンファレンス2019」が開催された。2018年に続き今回は2回目の開催で、世界各国から集まったブロックチェーン業界のキーパーソンによるセミナーや講演会も多数用意されるなど注目度の高いイベントだ。
FINTIDE編集部は2日目の会場に潜入し、気になった登壇者のスピーチをいくつか傍聴してきた。会場の様子を含めその一部をご紹介する。
この日は朝から冷たい雨。関東に雨が降ったのは数日ぶりだ。会場のパシフィコ横浜は海に面した立地のため海から吹き付ける風が冷たい。週末は大勢の観光客で賑わうエリアだが、平日の午前中は人影も少なく空を覆うどんよりとした雲も相まってどこか寂しげな印象だ。
会場には登壇者がスピーチする2つのステージと仮想通貨関連企業が出展する44のブースが並んでいた。この日は天候のせいか来場者の数は決して多いとは言えず、残念ながらお世辞にも賑わってるとは言い難い。それでも業界が注目するスピーカーが登壇した際には、ステージエリアに用意された椅子はほぼ埋まっていた。2日目のスピーチで最も多くの人を集めていたのは、楽天株式会社執行役員の久田直次郎氏と株式会社DMM Bitcoin代表取締役社長の田口仁氏の2人だ。
楽天Blockchainへの取り組み | 久田 直次郎(楽天株式会社/執行役員)
楽天は2014年頃からブロックチェーンに注目。2016年に楽天ブロックチェーン・ラボを設立し、以後ブロックチェーンの活用推進を積極的におこなっている。
現在は、ブロックチェーン技術の経験が浅い人でもAPIを通じて簡単にブロックチェーンの環境を構築できるというコンセプトのもと、以下3つのブロックチェーンプラットフォームサービスの提供をおこなっている。
エンタープライズレベルのブロックチェーンプラットフォームの環境で、セキュリティや可用性が高く、クラウドベースの開発をおこなえる環境を提供。
(2)クリプトカレンシーサービス
第三者の取引所とつなぐことで仮想通貨の売買を簡単にAPIを通して環境を構築できる。
(3)キーカストディサービス
ブロックチェーンの技術に関しては暗号化キーの管理が非常に強い要素になるが、この部分の理解は難しいため、APIを通じて簡単にセキュアな環境を構築できる。
つづいて楽天ブロックチェーンを使った実際のユースケースが紹介された。
2. R-Star ⇒ 感謝の気持ちを伝えるコイン(社内トライアル中)
3. AI×ブロックチェーン ⇒ ドキュメントの管理
4. 仮想通貨取引所「みんなのビットコイン」 ⇒ ホットウォレットの機能
そして最後に久田氏は、仮想通貨取引所「みんなのビットコイン」を含めた今後の楽天としてのブロックチェーンの展望について触れた。
買収した仮想通貨取引所「みんなのビットコイン」は、現在新サービスを開発中とのこと。(今年4月頃にアナウンスの見込み)単純な取引所としてだけではなく、楽天として他のサービスとの連携を進めていくことでさらなる利益を顧客に提供していくという。
楽天としての大きなデジタルアセットである楽天ポイントとブロックチェーンを組み合わせることで、新しいサービスの提供や新しい仕組みの実現を目指し鋭意検討していると語った。
ブロックチェーンはまだまだ世間一般にはそのワードすら浸透していないのが現実だ。しかし、様々なサービスを提供する楽天のような企業がブロックチェーンを使ったサービスを世に送り出していくことによって、近い将来ブロックチェーンは身近で当たり前な存在へと少しずつ変わっていくような気がした。
仮想通貨とは | 田口 仁(株式会社DMM Bitcoin/代表取締役社長)
DMM Bitcoinの田口社長は自身が持つ仮想通貨についての考えとDMMグループが今後目指すべき一つの方向性について語った。
仮想通貨の今後
田口氏は、2019年から2020年は仮想通貨にとって大きな分かれ目となると考えているようだ。ある通貨は既存のネットワークに飲み込まれ、ある通貨は領域を広げられるかは別として独立路線へ進み、またある通貨はレガシーとなっていき、各々優勝劣敗が決まっていくと田口氏はみている。
仮想通貨は多数のジレンマを抱える壮大なチャレンジャー
仮想通貨は、国と中央銀行、国際金融ネットワークといった通貨チャンピオンとアマゾンやグーグルといった既存ネットガリバーという2つの産業に対するチャレンジャーという厳しい位置付けにいる。その上様々なジレンマを抱えているのが仮想通貨であるという。田口氏が考える仮想通貨のジレンマは以下のようなものだ。
法定通貨は国や中央銀行によって裏打ちがあるが、仮想通貨にははっきりとした裏打ちがない。現時点で裏打ちとなっているのは法定通貨と交換できる点だけ。
■オープンソースなので誰でも真似できる
デジタルネイティブな領域の覇権はネットガリバーが独占している。
■民主的であることの難しさ
ビットコインキャッシュに代表されるように内部分裂が起きやすく統一は困難。
三種の神器を揃えて銀行業のような事業形態を目指す
現在DMMグループがおこなっている仮想通貨交換業は、今後法規制によってやれることの範囲が狭まってくると予想される。ここから更に伸びていくためには、資金移動業および金融商品取引業といった領域に進出していく必要があると述べた。「仮想通貨交換業」、「資金移動業」、「金融商品取引業」という三種の神器が揃うことで、ほぼほぼ銀行業と同じようなことができるようになるという。
日々状況が目まぐるしく変わり、明日どうなっているのかもわからない仮想通貨業界。金融庁の認可を受けているDMM Bitcoinのような仮想通貨取引所でさえ決して安泰とは言えないのである。そんな厳しい業界を生き抜いていくためにDMMグループは、既存のサービスだけに留まらず新たな領域へと踏み込もうとしている。こうした姿勢が消費者に喜ばれるサービスを生み出し、敷いては仮想通貨業界の発展へとつながっていくと信じたい。
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◆開催概要◆
名称: Japan Blockchain Conference YOKOHAMA Round 2019
日時: 2019年1月30日(水)- 1月31日(木)両日 9:00〜18:00
会場: パシフィコ横浜 ホールB
内容: ブロックチェーン技術の未来を担う国内外の有力企業・団体が一堂に会し、相互に情報交換、切磋琢磨しながら、ブロックチェーンの啓発を行い、ブロックチェーン適用領域の拡大を目指す。
主催: 一般社団法人グローバルブロックチェーン協議会