禁止はせずも一般投資家の参加には制限。ICO規制の更なる検討「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第10回)

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禁止はせずも一般投資家の参加には制限。ICO規制の更なる検討「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第10回)

11月26日(月)10時より、金融庁による仮想通貨交換業等の研究会(第10回)が、中央合同庁舎第7号館 13階にて開催された。

第10回研究会では、第8回研究会で議論されたICOに係る論点にさらに踏み込み「ICOに係る論点②」として「ICOに係る金融規制を検討するにあたっての基本的な考え方」を踏まえ「投資に関する金融規制を要するICO」および「決済に関する金融規制を要するICO」に係る規制の内容の全体像が事務局側より提示され、それに対して意見の交換がされた。

他にも、金融庁の事務局側より、過去に研究会で行われてきた討議内容に関してまとめた論点整理の共有が行われた。

1.ICOに係る金融規制を検討するにあたっての基本的な考え方

まず初めに金融庁の事務局側より、詐欺的事案が多く8割が詐欺ないし成果を提供できていないとの指摘もされ、ICOが有効に活用されている事例がほぼなく、トークンの権利や利害関係が曖昧であること、発行体と投資家ともにモラルハザード生じさせている実態との報告を踏まえ、適正な自己責任を求めつつ、一定の規制を設けたうえで利用者保護や適正な取引の確保を図っていくことが適当と説明された。
しかし、グローバルに調達できる、中小企業が低コストで調達ができる流動性を生み出すなど既存の資金調達手段にはない可能性がある点も一部考慮がされ、ICOを禁止するのではなく機能やリスクに応じた規制を構築することが適当と考える方向で説明がされた。

そのうえで、資金調達手段に用いられる技術の如何を問わず、同様の機能やリスクについては同様の規則を適用するという考え方に基づき、“投資性を有するICOについては投資に関する規制(※2)”を参考とし、それ以外のICOについても支払い・“決済手段としての性格を有する場合は決済に関する規制(※3)”を参考とする対応で検討することが適当と説明がされた。

メンバーからは、発行体に対するガバナンスの欠如や事業への本気度が見えない点、ICOが駄目になればSTO、トークンエコノミーと称して通貨を取り扱うものを馬鹿にしている、など厳しい声も聞かれた。

ICOに関する海外での調査・報告等7P:仮想通貨に係る整理 (決済規制の対象となる仮想通貨への対応)
※研究会第10回討議用

既存の資金調達手段において求められる規律 既存の資金調達手段に対する規律と、投資性を持つICOに係る検討事項
※研究会第8回資料より第10回に再掲

2.投資に関する金融規制を要するICO

まず投資行為について自己責任の原則の徹底が意見された。しかし自己責任が問われる対象の選別の必要性についても意見が出た。仮想通貨の投資については一般投資家層が従来の一般投資家と同一のリテラシーを求めるに足る存在なのかに疑問が提示された。そのため、未上場株が制限されているのと同様にICOへの投資参加を適格機関投資家に限定し、未上場について一般投資家への投資勧誘の制限を必要とする方向で意見への賛同が相次いだ。

金融庁の事務局側から行われた説明では、投資性のあるICOを仮想通貨の流動性の高さから、広く流通する蓋然性が高いとして有価証券における第一項有価証券と位置付け検討するのが良いのではと提案された。(※)

※有価証券における、第一項有価証券/第二項有価証券の振り分け
金融商品取引法二条1項、2項
【第一項有価証券】株式、株券、社債、手形債券、新株予約権、
【第二項有価証券】信託の受益権、合同会社の社員権、組合契約の出資者権利(みなし証券)

3.決済に関する金融規制を要するICOに係る規制の内容

支払い・決済性のあるICOについては、仲介する業者及び発行体の業制御について意見が出た。
まず、仮想通貨全体として発行体が直接トークンの販売・交換を行った場合は交換業にあたるが、交換業登録済み業者が引き受けて販売・交換を行った場合は交換業にあたらない点の説明がされた。

そして、発行者が仮想通貨の保有者に対して負う債務の有無・内容、発行価格の算定根拠、出資額が適正か判断できる事業計画書の審査や継続的なモニタリングの必要性など、投資に関する金融規制と同様に対応すべき情報開示規制の点が意見された。

その他、募集の規模や純資産額に応じた制度的対応の必要性が意見され、さらに11月の最近になり米国証券取引委員会(SEC)による過去のICOへの制裁金が課された例を挙げ、罰則による対応など事後の対応の重要性についても意見が出た。また、投資型クラウドファンディングなどの想定も必要が無いような「より寄付に近い」ケースに関しても意見が出た。

金商法を軸とした規制に概ね同意。その上での問題点

メンバーより、事務局側が提示した金商法を軸とした規制の全体像については概ね同意が得られていた。
その上で、※2※3のICOに係る規制を投資と決済で分けることに対し、決済の規制が緩いように感じるなど、発行者が緩い方の規制で適用されるよう抜け道的対応を試みる懸念からどちらにも同等の規制を実施した方がよいという意見が聞かれた。

また、金商法における集団投資スキーム持分を規制の参考とした場合、発行体への規制が弱い懸念について意見が出ました。仮想通貨の流動性、ICOの特性、発行体はトークンに関して証券を真似ているが現行の有価証券とは実態が乖離している疑念からか、実効力が発揮されるか疑わしいという意見もあり、制度的な当てはめに慎重な姿勢も見られた。

他にも、仲介業者などの第三者による規制も、取引所の発行管理ではない個人が作成するウォレットへは監視など実務上の対応が難しい点から、転売への対応など実効力に疑問がある点が指摘された。

仲介する第三者

ICOの規制に対して、ICOを仲介する「適切な第三者としての業者は何なのか?」についても意見が出た。
資金決済法における仮想通貨交換業の登録を受けた取引所が入る場合や、金融商品取引法の規制に沿った証券会社が中に入る案も説明として提示されたが、メンバーからはこれに対し制度的な適性への指摘や、第三者として既存の証券会社等が入ることには混乱を招き疑問があるという意見も出た。

投資の原則、自己責任

事務局からの説明でも「多くの場合、投資家は転売できればよいと思っており、発行体は資金が調達できればよいと思っているのが現状であり、規律が働かず、モラルハザードが生じやすい」との前提となる報告が出されており、メンバーからも基本的な考えとして、投資原則は自己責任であることが強く強調された。
ICOの規制に金融庁のリソースを過度に使うことはよくなく、情報開示義務と自己責任の警告を徹底することで、ICOを禁止することなく制度的な対応を試みることが適切と意見された。
さらに、詐欺事案が多いことが分かっている対象への投資は、「宝くじのようなもの」「寄付」のように自己責任の範疇と捉えるべきとの意見も見られた。

ただし、原則が自己責任とはいえ、どこまでが適正な自己責任と言えるかについて、自己責任を問うための利用者保護としての発行体の事前事後の情報開示や財務状況のスクリーニングなどの審査義務、刑事罰を行える罰則規定など、一定の規制を設けた上でという意見が強調されていた。

広告に関する規制の実効性

広告行為については、ICOを行うトークンの発行元が主体となり行っている実態について指摘がされた。
また、金融商品取引法の定める広告規制と、仲介業者による広告審査規制、仮想通貨交換業協会による自主規制など考慮されるが、協会への加盟には強制力がない点など実効力が疑問視する意見が出た。
その他、ターゲッティング広告や、ブログによるアフィリエイトを目的とした過度に煽る喧伝行為など、自主規制が及びにくい媒体への規制方法について、仲介するプラットフォーマーへの注意喚起の必要性等、より横断的な検討の必要性に対する意見が出た。
また、仮想通貨交換業協会の奥山会長からは、協会として広告に対し自主規制を行ったとしても、雑誌や書籍などの協会外の者による媒体行為には対応が難しく配慮がほしい旨の要望も聞かれた。

次回、制度的な全体像をより具体的に

今回、ICOの規制について投資性や決済性など様々なICOトークンにおける論点の整理が行われ、金融商品取引法を参考とした全体像へ概ね賛同を得つつ、規制の具体的な検討課題に踏み込み始めた印象だった。その過程で、仮想通貨の発行者のうたう情報とは実態が違い、ICOも参考とする資金決済法や金融商品取引法では実効力が発揮されるのかの疑念も数多く出された。

将来的にICOと同様のクロスボーダーで法律の抜け穴を狙った資金調達手段や投資勧誘が出現するであろうことが予想されるため、今回のICOに限らず大枠で似たような事態に対応できる規制の在り方を考慮すべきという、先を見越した対応の必要性が意見された。

最後に次回以降の研究会では、今回の賛同いただけた指摘を踏まえ、より制度的な全体像を具体的に議論する方針が出されて閉会となった。

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