欧州中央銀行(ECB:European Central Bank)が14日に「暗号資産に関する金融の安定性、金融政策、そして支払いと市場インフラへの影響」というレポートを発表しました。
レポートによると、ユーロ圏での法定通貨(EUR:ユーロ)とビットコインペアでのトレードは、全体の平均10%前後を占めており、ビットコインが最も多く取引されている暗号資産と報告しています。また、2017年9月以降、中国がビットコインに関する法律を改正したため、中国人民元での取引が減少し、他の通貨にシフトしたと述べています。
さらに、レポートでは、暗号資産がどのように金融市場へリンクしているかを説明しており、それによると、上場投資証券(ETN)や差金決済取引(CFD)などの方法で、暗号資産の金融商品が提供され始め、主にビットコインまたはイーサリアム価格に追随した商品になっていると報告しています。
2018年第3四半期、ユーロ圏での暗号資産に関連した金融商品の保有者は、個人世帯がメインとなっており、主な市場はベルギー、イタリア、ドイツとなっています。
また、2018年第3四半期末での商品の保有総額は、11億6,300万ユーロ(約1,431億円)で、2017年第4四半期の2億6,900万ユーロから4倍以上に急増していますが、証券市場規模と比較すると非常に小さいと述べています。
銀行は暗号資産に関連する商品を保有しておらず、ETNとCFDによる間接的なエクスポージャーの合計は、2018年第3四半期末で2万ユーロ以下となっていまが、ヘッジファンドと資産運用会社の間では、暗号資産ベースの商品へ強い関心があり、規制動向に配慮した暗号資産商品へのエクスポージャーは、今後高まる可能性があるとしています。
ECBは、「現在の市場状況では、暗号資産のリスク/金融の安定性、金融政策、そして支払いおよび市場インフラへの影響は、枠組みの中で制限され管理可能。」と判断していますが、暗号資産市場は活発であり、金融部門および経済との関連性は高まる可能性があり、それが、金融市場インフラに悪影響を与える可能性もあるため、他の関係当局と協力して、監視する必要があるとしています。
暗号資産市場の成長や安定には、機関投資家などによる参入が必要と言われていますが、ユーロ圏でも規制などを含め、機関投資家が安心して参入するための地盤がまだできていないと考えられます。
CoinbaseのCEO、ブライアン・アームストロング氏はインタビューで「機関投資家に参入してもらうために、いろいろ聞いてまわったが、カストディや保険などのサービスが整っていないことが分かった」と述べており、暗号資産市場が成長するには、これら従来の金融市場にあるサービスを追加していくことが必要と考えられます。