仮想通貨から暗号資産へ、呼称変更は吉と出るか凶と出るか

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仮想通貨から暗号資産へ、呼称変更は吉と出るか凶と出るか

仮想通貨が消え去ろうとしている。と言ってもどこかの取引所で大規模なハッキングがあったとか、存在自体が消え去ると言った類の話ではなく、呼び名の話である。政府は15日、仮想通貨の呼称を「暗号資産」に変更することを閣議決定したのだ。今後はこれまで仮想通貨と呼んでいたものを暗号資産と呼ぶことになる。暗号資産という呼称はすんなり浸透していくのであろうか。

「仮想通貨」9年の歴史に幕

仮想通貨の呼び名が世間に出回り始めたのはビットコインが誕生した2009年頃。以来、「仮想通貨=ビットコイン」のイメージが定着していたが、イーサリアムやリップル、モナコインなど様々な種類のコインが生まれ、実体のないデジタルデータとしてのお金を総称して仮想通貨と呼ぶようになっていった。

世間に広く認知されたのはごく最近なもので、巨額ビットコインが消失したマウントゴックス事件や、2017年末の仮想通貨バブル、そしてコインチェック580億円流出事件を経て今や誰もが知る一般的な単語となった。さらに言うと2018年の新語・流行語大賞にノミネートまでされていた。そんな「仮想通貨」という言葉が死後になろうとしている。なぜ今「仮想通貨」改め「暗号資産」にする必要があるのか。理由は2つあるという。

1.ここ最近、国際社会で「暗号資産」と表現される機会が多くなってきているため
2.国が価値を保証する法定通貨との混同を避けるため

理由はもっともである。世間の大半を占める仮想通貨を購入したこともない人々にとっては格段気にすることでもなく、困るわけでもなく、正直どっちでもいい話だろう。しかし仮想通貨という呼称に慣れ切ってしまった業界関係者にとってはどちらかと言えば迷惑な話である。

業界関係者それぞれの適応模様

閣議決定した以上、業界関係者は今後何かしらの対応に追われることになる。それぞれ大まかに見ていこう。

【仮想通貨交換業者】
仮想通貨から暗号資産の変更に伴い、仮想通貨交換業者は「暗号資産交換業者」に改められる。一括変換かければ済む話であるが、サイト内で使われている仮想通貨の文言は利用規約の中含めすべて「暗号資産」に変更が必要だ。強制ではないと言ってはいるが、金融庁の認可の元で営業している以上、交換業者は今回の決定に従わざるを得ない。おそらくどの交換業者も我先にと迅速な対応を見せることが予想される。

【仮想通貨情報サイト】
仮想通貨に関する情報を届けている以上、こちらも交換業者同様にサイト内の一括変換が必要となる。気をつけるべきは記事を書いている記者だ。しばらくは癖で仮想通貨という言葉をそのまま使ってしまう可能性も高い。最終校正の厳重なチェック体制が不可欠となる。

【仮想通貨のウォレット提供業者】
こちらもサイト内の文言や商品説明書などの変更が必要となる。ただウォレットの場合は、そもそも「資産を安全に管理しましょう」などと謳ったりもしているので、案外「暗号資産」という呼称の方がしっくりするのかもしれない。

【仮想通貨取引ユーザー】
意識的に暗号通貨と呼ぶことはなく、しばらくは仮想通貨は仮想通貨のままであろう。取引所や情報サイトで仮想通貨の文字が消え、暗号資産の文字を目にする機会が増えるにつれ徐々に違和感が薄れ浸透していくのではないだろうか。

暗号資産の呼称変更はどんな未来を呼ぶ?

一口に呼称変更と言っても置かれた状況や業界によってその浸透度合いや結末は実に様々だ。「東京都立大学」が「首都大学東京」に名称変更されたものの、認知度不足を理由に再び東京都立大学に戻った例もある。また、お笑いコンビ「海砂利水魚」が「くりいむしちゅー」に改名してそこからブレイクしたという例もある。

暗号資産が全く認知されず再び仮想通貨に戻る羽目になるのか。はたまた暗号資産になったことで空前の暗号資産ブームが訪れるのか。仮想通貨から暗号資産への呼称変更は吉と出るのか凶と出るのか、その行く末が何より興味深い。