これまでも何度かトライされてきましたが、まだ承認が下りず実現には至っていないビットコインETF。なぜ再度注目されているのか、もし承認されればどのようなこと起きるのかわかりやすくお伝えします。
ETFとは?
そもそもETFとはExchange Traded Fundsの略で、上場され売り買いがしやすい特徴がある投資信託のことです。ETFの代表的なものは日本を代表する225銘柄で構成された日経平均株価連動型のETFなどです。
投資はリスクヘッジのためどうしても分散投資したいところですが、資金が少ない場合は1銘柄当たりの最低購入金額が決められているので200を超えるような種類の株を買うことができません。そこで便利なのがこれらの投資信託です。あらかじめ主要な銘柄が複数含まれており、少額で分散投資できたり、管理も簡単なためこういった投資信託が数多く存在します。
通常、投資信託は1日1回、その日の基準価格にて申し込み、または解約を行います。その申し込み・解約をもっと便利にするため、投資信託そのものを上場させ売買のしやすさを付加したものがETF、上場投資信託です。市場が開いている間は投資信託自体を自由に売り買いでき非常に需要があります。
ビットコインETFとは?
ビットコインETFに話を戻しましょう。そもそも上記で上場と言っているのは仮想通貨取引所ではなく株式市場での上場の話です。現在は仮想通貨への投資と、株式への投資は取引所が分かれているため、株式へ投資されている運用資金が仮想通貨市場に流入しやすい状況とは言えません。
そこで株式市場で簡単に仮想通貨投資を可能にする金融商品がビットコインETFです。そのETFはビットコインに投資することを目的とし、株式投資を行っている同じ市場でETFを介してビットコイン投資を簡単に行うことができます。
仮想通貨市場と株式市場の規模
それでは株式市場で簡単にビットコイン投資を行うことがそんなに期待感のあることなのでしょうか。次の規模感を想像してみてください。
仮想通貨の大まかな資産価値ですが、第1位のビットコインで15兆円、第2位のイーサリアムで5兆円、仮想通貨全体では約30兆円ちょっとです。一方の株式市場ですが全体で約8000兆円を超えており、仮想通貨市場の200倍を超える巨大な市場規模です。
もちろん仮想通貨という性質上これらの運用資金がすぐ投入されることはありませんが、少なからず何度もETF申請を行われてきた過去を見ると、市場からのニーズがあることが予想されます。
銀行、保険会社、年金運用、農協など巨大な資金力を持つ機関投資家が一部の運用資金を仮想通貨に投資してみようと決定を下したら?ほんの少しの資金だとしても株式市場で運用されている資金が大きいため、現在の仮想通貨の市場規模を考えると巨大な隕石が降ってくるようなものです。そういった現状を踏まえビットコインETFの承認に大きな期待が持たれています。
ビットコインETF、実現の可能性
ビットコインETFの申請歴史は最近始まったわけではなく、2013年から何度も申請されておりいずれも却下されています。米証券取引委員会SECの却下理由として、バブルともいえる激しい値動き、仮想通貨市場規模の小ささ、通貨分裂などコントロールの効かない管理者不在の特徴、保管時のハッキングリスクなどを理由として挙げています。
ではなぜ今回VanEckとSolidXが申請したETFが注目されているのか。今回上場申請されているのはアメリカ、シカゴにある大手オプション取引所CBOE(シカゴオプション取引所)ですが、このオプション取引所ではすでに先物取引としてビットコイン先物が上場している実績があります。(ビットコイン先物が上場したのは2017年12月。ビットコイン価格が200万を超える最高値を記録したのは先物上場への期待感が含まれていました。)
同じく2017年12月にビットコイン先物を上場している、こちらも世界有数の取引所CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物の取引量ですが、2018年第2四半期にも取引量が大幅に増えたとの報告がありました。
(CMEGroup公式ツイッターより ビットコイン先物取引量)
市場ニーズ、そして先物として右肩上がりの取引実績、SECの関係者に近い情報なども加味され、ついにビットコインETFが認定されるのではないか?との推測が広がっているのです。
問題はすべて解決していない
ただ、楽観的な観測が広がっていますがもちろん良い材料だけではなく、先にも挙げた却下理由につながった問題点がすべて解決しているわけではありません。
管理者がいない仮想通貨の特徴はすぐに変更できません。さらにETFの承認期待が膨らんだあとのビットコインの値動きを見てみてください。このボラティリティの高さは却下理由の主な要因になるはずです。
申請されたビットコインETFの中身
それでは最後に、今回申請されているETFの中身についてお伝えします。取り上げたのは投資運用会社VanEckと仮想通貨の金融会社SolidXが提供しようとしている「SolidX Bitcoin Shares」というETFです。名前通りビットコインのみを投資対象とした投資信託で、最低25ビットコインという機関投資家向けの商品となっています。
投資対象が仮想通貨ということもあり、ビットコイン資産には複数の保険会社によって最大1億2500万ドルまで保険がかけられ、ビットコイン保管方法もコールドウォレットはもちろん、自然災害にも対応すべく物理的に離れた場所に保管されることが明記されています。このあたりの資産管理方法も上場につなげたい意欲が伝わってきます。
今回はビットコインのみの投資対象ですが、もしこれが承認されれば仮想通貨を投資対象としたETFが続々と登場することが予想できます。このビットコインETF承認可否が今年の仮想通貨の運命を握る判断と言え、そのSECからの判断結果は早くて来月8月10日に公表するとしています。