ビットコインキャッシュのハードフォーク混乱から始まった2018年最大の暴落劇を11月の主な動きを中心に時系列でまとめてみました。どのような原因があって市場全体が暴落してしまったのか。これを読めば今回起こったことの大まかな概要がつかめます。
暴落の火種 争いはここから始まった
2018年8月16日
Craig Wright氏率いるnChainがSatoshi Vision(SV)発表
Craig Wright氏によるSVの必要性(8月19日)
もともとビットコインキャッシュは年に2回のハードフォーク(アップデート)を予定しており、11月15日にアップデートすること自体は予定通りでした。なぜ混乱が起きてしまったかというと、ビットコインキャッシュの開発コミュニティABC側とSV側での意見が割れてしまったからです。
もともとビットコインキャッシュのクライアントシェアはBitcoinABC側が高く開発のメイン団体はBitcoinABCと言えます。しかしその内容(ABC側アップデート内容)が当初のビットコインキャッシュが目標としていたものから逸脱しているとCraig Wright氏率いるnChainが異を唱え、まったく内容の違うSatoshi Vision(SV)を発表しました。これが今回暴落につながる最初の火種です。
ビットコインキャッシュでは開発が中央集権化することを避けるため、アップデート内容は投票で決定される決め事があります。投票権を持つのはビットコインキャッシュのマイナーです。今回の混乱がハッシュ戦争と言われているのは、マイナー(のハッシュ合計)からの支持をどれだけ集めることができるかを争ったからです。
火種となる8月の発表から、混乱を避けるための回避策なども提案されてきましたが、両陣営の対立は深まるばかりで一向に解決しないまま11月に突入します。
FINTIDE記事「3分で分かるビットコインキャッシュ、ABCとSVのハッシュ戦争」
暴落までのカウントダウン
2018年11月2日
・大手取引所BinaceがABC側の内容をビットコインキャッシュ公式としてリンクを付け、サポートを行うとする記事を発表 (公式サポートページより)
11月5日
・ビットコインキャッシュの価格が400ドル台から急上昇し7日には600ドル越えへ
11月8日
・大手取引所Poloniexは2つのハードフォークコインを先物取引として取り扱い開始(ツイッターより)
11月12日
・SV側のハッシュが増加し過半数を占めるように
主要通貨へ飛び火、第一回目の大暴落はBitcoinの大量売りの予測だった
11月14日
・ビットコインキャッシュではなくビットコインの価格が低下へ
SV側に負けることは、マイニング事業を手広く手掛けるジハンウー氏、ロジャーバー氏の今後の事業にも大きな影響を及ぼします。そこでなりふり構わず、ビットコインのマイニングを行っていたハッシュパワーをビットコインキャッシュにつぎ込み始めます。例えるなら無関係の隣の国から傭兵を大量に連れてくるようなものです。
この時ビットコインキャッシュではなくビットコインの価格影響のきっかけを作ったのは、ハードフォークの混乱時に激しく交わされていた当事者たちのツイッターやりとりです。Craig Wright氏は「ABC側はビットコインを売ってでも(戦力を増強するために)対応しなければならないだろう。彼らが大量にビットコインを売れば市場は耐えられるだろうか。私はBTCが1000ドルになることも恐れない」といった内容を投稿しました。
実際に市場が耐えられないほどの大きな売りがABC側から出たとは思えませんが、元々は2018年はハッシュレートが上がり続け、マイニング事業として難しい状況が続いていました。さらにこの混乱で損失が増えることは確実(その後BitMEX Researchアカウントで両陣営のコストレポートを実況)です。投資家も「たしかに両陣営からビットコインが大量に売られてもおかしくない状況だ」と読み投げ売りが始まりました。
11月15日
・ビットコインキャッシュがハードフォーク
・15日のビットコインの最低価格は5300ドルへ
11月16日
・【BCHフォーク関連】ABC側のブロックが伸びてABC側が優勢へ
・【市場関連】米証券取引委員会が2件のICO案件を初めて摘発(公式ページはこちら)
FINTIDE記事「米証券取引委員会(SEC)の規制動向」
11月18日
・【BCHフォーク関連】引き続きABC側が優勢 しかし争いは長期戦か
・【市場関連】仮想通貨のご意見番FundstratのTom Lee氏が価格予想を下方修正へ。
2度目の暴落は複合要因でゆるやかに下がっていった
11月19日
・価格は5500ドルほどを維持していましたが再び暴落を開始
・【BCHフォーク関連】両陣営の戦いは続く 戦力維持のため損失は大きくなる一方で消耗戦へ
・【市場関連】取引所大手Huobiが予定していたBitcoinCash(ABC)の取り扱いを急遽延期 (ツイッターより)
11月20日
・Bakkt(バックト)のサービスインは2019年1月24日に延期(ICE公式発表)
FINTIDE記事「Bakktサービスインは2019年1月24日へ延期」
11月25日
・ビットコイン4000ドル割れし3000ドル台へ
ハードフォークのハッシュ戦争は一時終戦か
11月26日
・【フォーク関連】SV側の大手マイナーCoingeekがプレスリリース(公式発表より)
FINTIDE記事「勝者はビットコインABCなのか、それともSVか?」
まとめ
細かい動きはまだありますが、ビットコインの下落する原因となったことを中心に暴落までの概要をまとめてみました。
平等なマイナー投票。世界に分散されたマイナーからの清き一票などをイメージしてしまいますが、実際起こったのは主要マイナー数団体が争っているだけ。そしてそのマイナーの投票数は他通貨のマイニングから借りてきて急に投票権を増やせるという、なんとも後味の悪いものです。勝ったABC、再出発を決めたSV、両陣営にとっても大きな傷跡を残す結果ではないでしょうか。
11月29日現在、ビットコイン価格は4000ドルに戻りましたが、年内予定だったBakkt延期などもあり年内に大きな好材料がないように思えます。悲観ムードは長く続くのでしょうか。早く日の出が見れることを願うばかりです。