日銀がデジタル通貨発行に関するレポートを公表 日本の未来のお金の姿

日本の金融システムを握る中央銀行である日本銀行(以下、日銀)が、デジタル通貨を発行した場合の問題点や論点を記した詳細なレポートを2月19日に発表しました。

民間企業がステーブルコインを発行する取り組みは、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などで行われており、その内容はある程度公表されていますが、中央銀行である日銀がデジタル通貨を発行した場合を想定したレポートはこれまでになく興味深い内容となっています。

大前提として「現時点では日本銀行券に代わるデジタル通貨を発行する計画はない」としていますが、もし将来発行した場合、そのメリットやデメリット、通貨設計に関しての問題点が詳しく解説されているので、ポイントをピックアップしてまとめます。

レポート発行の背景

2007年のiPhone登場以降、わずか10年の間にモバイル決済が拡大している。サトシ・ナカモト論文からブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)などの新しい情報技術も登場した。

このような状況の中、スウェーデンやウルグアイでは中央銀行としてデジタル通貨を発行することが具体的に検討されている。また国によってはキャッシュレス化が進んでおり、現金の流通が少なくなっている状況も見受けられる。

現在、日本の銀行券は紙であることに由来する保管や輸送、警備などさまざまなコストがかかっている。デジタル通貨を発行すれば、脱税や犯罪対策、金融政策にも有効活用できる可能性がある。

情報技術の革新やキャッシュレス決済の拡がり、決済の効率性向上、犯罪対策など様々な観点からデジタル通貨発行の考察が重要である。

世界の状況を見回すと日本だけがキャッシュレス化に遅れを取っています。デジタル通貨は紙よりも効率が良く、デジタル管理できれば犯罪対策にも活用できることから、もう発行を想定して議論も進めなければ、という趣旨のレポートとなっています。

発行するなら種類は2パターン

日本の中央銀行がデジタル通貨を発行する場合は、通貨の想定種類は2種類あるとしています。

1.銀行券
紙の銀行券と同じように、一般の人々がいつどこでも日常に広く使えるもの。
機能としてプライバシーが守られる必要がある。

2.中央銀行当座預金
日銀と民間銀行など大口取引のために使うもの。
※現状すでにデジタル化され管理が行われている

中央銀行がデジタル通貨を発行する場合、通常は1.のイメージを想像してしまいますが一般に流通するステーブルコインの他に、民間の銀行とのやりとりに限定して発行することも想定されるとのこと。

日本の中央銀行である日銀は、民間銀行の銀行として役割が大きいことから2.のような発行の想定がされています。ただこの2.の日銀口座用は、現状すでにデジタル管理されているので、ブロックチェーン技術を取り入れるかどうかは単純に現状の機能と比較するだけだとレポートされています。

そして問題が多いのは一般に広く流通するデジタル通貨発行だとしています。民間の銀行業務への影響が大きいこと、民間預金から日銀発行のデジタル通貨への資金移動が起こることなど、考慮すべき点が多くあるとしています。そのポイントを見ていきましょう。

中央銀行がデジタル通貨を発行する場合の論点

<通貨の設計についての論点>
1.誰が持つのか
一般国民が対象か、日銀口座と同じように民間銀行が対象か

2.発行方法
日銀が直接発行か、民間銀行を通じて発行か

3.タイプ
一般国民を対象とする場合、口座型かトークン型か
(口座型はサーバ管理のため匿名性がない。一方ブロックチェーン技術を使ったトークン型の場合は匿名技術を使ってプライバシーを守ることができる)

4.発行量
デジタル通貨の総発行量を制限するか、しないか
(発行を制限しない場合は民間の銀行預金がデジタル通貨を通じて日銀口座に移動してしまう。制限する場合はプレミアム価格がついてしまう)

5.付利(利子、金利)をつけるかどうか
(一般流通するお金には利子はないが、民間銀行用の口座には利子がある。デジタル通貨の場合はどうするか)

よく仮想通貨業界で話題になるブロックチェーン技術のスケーラビリティ問題はこのレポートでは挙げられていません。そこは技術革新が解決する前提で論点がまとめられています。

それから匿名技術というと、日本の取引所から外されたことで犯罪に直結するイメージがついている方も多いと思いますが、そもそも従来のお金はプライバシーが守られたものであることが再確認できます。

もし将来、日銀がデジタル通貨発行する場合、匿名技術が盛り込まれる可能性が高いのではないでしょうか。

現状の金融構造への影響

1.民間銀行への影響
現在、民間銀行が行っている融資など資金仲介が縮小する可能性

2.デジタル通貨に急速に移行する可能性
(市場不安などが起こった場合など)

3.金融調節や金融政策への影響
デジタル通貨にも利子をつければ金融政策にも使えるが、その付利水準の判断は容易ではない。金融政策への効果については慎重に見るべき。

現在、民間の銀行は一般国民から預金を集め、その資金を使って企業などに融資を行っています。デジタル通貨が現在の一般的な預金にも影響する場合、社会全体にとって逆効果になる可能性があると指摘しています。

また一部の民間銀行に問題が発生した場合など、一般的な預金が日銀が発行するデジタル通貨への交換に殺到する可能性があることが挙げられています。また金利を調整することにより金融政策にも使える可能性が挙げられていますが、現実の経済は複雑な要素から成り立っていることからデジタル通貨の金利判断は簡単ではないと考察しています。

金融ビックデータの活用

このレポートの最後でデジタル通貨を発行した場合、国単位で金融に関する貴重なデータが取れる可能性についても触れられています。

デジタル通貨が流通すれば、そのデータを収集しビックデータとして様々な産業への活用方法が考えられます。日本の経済全体にとっても有効活用できるでしょう。

ただそのデータを日本銀行が独占し民間の企業努力を阻害していいのか、また、日銀が発行しない場合は民間企業の数社に重要なビックデータが集まっていいのか、などメリットデメリットが指摘されています。

まとめ

レポートにある問題点の一つ一つが規模も大きく、解決する方法は簡単には見つからないでしょう。

ただ、冒頭でもデジタル通貨の発行計画はないとしていますが日本の金融システムを守っている日本銀行がデジタル通貨の発行を調査していることは、非常に意味が大きいと思われます。

もし実現されればどうのような機能を持った通貨で、どこで手に入れることが出来るのかなど、日本の未来のお金が少しだけ想像できるレポート内容でした。

※引用元:調査・研究「情報技術革新・データ革命と中央銀行デジタル通貨」

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