バックト(Bakkt)のCEOを務めるケリー・レフラー(Kelly Loeffler)氏は、昨年から準備していたビットコインの先物取引と、カストディ業務を9月23日に開始すると正式発表した。プロジェクト立ち上げ当初は2018年11月にサービス開始予定だったことから、規制当局からの正式認可まで約10ヵ月間を費やした。
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— Bakkt (@Bakkt) August 16, 2019
インターコンチネンタルエクスチェンジとは
インターコンチネンタルエクスチェンジ(Intercontinental Exchange/ICE)は米国アトランタに本社を置く世界有数の取引所運営グループ。2000年に取引所を設立し、その後電子取引という武器とCEOであるジェフリー・スプレッチャー(Jeffrey Sprecher)氏の手腕により、次々と世界の取引所や取引所グループを買収し成長した経緯がある。
現在は世界最大の取引量を誇るニューヨーク証券取引所も傘下におさめ、主要取引所を10か所以上も抱える世界有数の取引所グループとなっている。
バックト(Bakkt)とは
この20年で主要な取引所の電子化を担ってきたといっても過言ではないICEグループ。取引の近代化への中心にいた人物、ジェフリー・スプレッチャーが次世代の金融システム構築として温めてきたプロジェクトが、仮想通貨専門のバックト(Bakkt)である。
バックトのCEOはジェフリー・スプレッチャーの妻であるケリー・レフラー(Kelly Loeffler)氏が務めていることでも重要プロジェクトであることが伝わるが、妻と言ってもケリー・レフラーは2002年からICEにて要職を務め急成長への重要な役割を担ってきた金融専門家である。
2017年にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)がビットコイン先物取引を開始したことを横目に、あくまでビットコイン現物を取り扱う先物取引所にこだわり、ICEグループは2018年9月に、ビットコイン現物の受け渡しを含む先物取引であるバックトを正式発表した。発表当初は2018年11月からサービス開始すると公表していたが、特にカストディ機能について米商品先物取引委員会(CFTC)からの認可が下りず、サービス開始を延期してきた。しかし2019年前半にカストディ部門の整備を行い、2019年7月からユーザー受け入れテストを開始し正式サービスに近づいていることを公表していた。
注目点は既存の金融市場にてビットコイン投資
既存の株式市場と比べると仮想通貨市場はまだまだ若く規模的にも非常に小さい。しかも機関投資家にとっては既存の金融市場にて現物のビットコインを取り扱う金融商品が現在ないため、機関投資家が仮想通貨投資を行うためには大きなハードルがあったと見られている。
ただ今回のバックトでは、農作物やエネルギーを始め様々な先物商品を取り扱い長い歴史を持つ既存の「ICE Futures U.S.」にてビットコイン先物の上場が行われ、規制当局から正式認可をされたビットコインの保管が行われ、さらにこちらも既存の清算機関としてすでに機能している「ICE Clear US.」がビットコインの受け渡し業務を行う。
つまり既存の金融商品を取り扱ういつもの市場にてビットコイン投資と管理サービスが利用できることになる。これが大きな注目を集めている理由となっている。
仮想通貨部門バックト(Bakkt)の主なサービス内容
先物取引所 ICE Futures U.S.
インターコンチネンタルエクスチェンジが運営する先物取引所で、農作物やエネルギーを始め様々な商品を扱っている。ビットコイン先物もこの取引所にて上場され、先物の種類は日次決済と月次決済の2種類となる予定。
倉庫(カストディ機能)
今年4月に親会社のICEを通じて、カストディ専門企業Digital Asset Custody Company(DACC)を買収。ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からの正式認可を受けBakkt Trust Companyとして物理的にビットコインの保管業務を行う。特に1億2500万ドルにも上る保険で資産保護が行われていることが大きな特徴となっている。
清算/決済機関 ICE Clear US.
先物商品の決済や受け渡し業務を行っている清算部門。農作物などの既存の先物商品と同じく、ビットコインそのものの受け渡しなどがここで行われる。
普及目前の電子決済
今回の公式発表の中でケリー・レフラーは、ビットコイン論文が発表される約10年前のノーベル賞受賞した経済学者ミルトン・フリードマンの予言を引用した。
1999年、ミルトン・フリードマン
現在なくもうじき開発されるであろう技術の一つは、信頼できる電子現金です。AがBを、またBがAを知ることなく、インターネットで買い物をしてAがBに資金を送る方法です。
ミルトン・フリードマンの素晴らしい先見の明を紹介し、そして今日、機関投資家を始めとした金融機関へ安心で正式認可を受けたプラットフォームを提供できることがバックトの最大の特徴であると強調している。