コインベース・カストディ(coinbase Custody)の13億ドル(1400億円)が少なすぎる

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コインベース・カストディ(coinbase Custody)の13億ドル(1400億円)が少なすぎる

6月17日、コインベースの手掛けるカストディサービスの預かり資産額が13億ドル(1400億円)を超えたと発表されました。20億ドル台も視野に入っていると語られています。
サンフランシスコを拠点とするコインベースは2018年の7月に機関投資家向けカストデイ事業「coinbase Custody」を開始しています。

約1年が経過した現在、この13億ドル(1400億円)というのは多いのでしょうか?増加ペースとして順調と言えるのでしょうか?少し考えてみたいと思います。

機関投資家向けとしては微々たる額

先に結論から言うと、13億ドルというのは機関投資家が束ねる金額の規模感から言えばたいした金額ではありません。コインベース・カストディを率いるSam McIngvale CEOはサービスを開始した2018年7月時に「2019年末までに最大200億ドルを目指す」と発言していました。さほど大きくない仮想通貨市場でも1~2年でそれを目標に掲げられるくらいな数字感覚です。ですが、すでに1年が過ぎ2019年も半分の段階で達成率は1割にも届いていません。

まず、コインベース・カストディの最低預入金額は1000万ドル(10億円規模)になります。顧客10社で1億ドル、100社で最低10億ドルになることになります。機関投資家とは個人投資家から拠出された資金を取りまとめて運用などする管理法人を指します。

コインベースは、2018年7月の開始時に10社の預かり見込みが進んでいるとしていたので、10社なら1億ドル100億円規模以上からの業務スタートだったはずです。最初の顧客の1社とされた仮想通貨関連ファンド大手「Polychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)」が10億ドル規模のクリプトファンドと言われコインベースとの密接さから、資産の預け入れ割合によってはスタートからもう幾分多かったのではないかと。
(※Polychain Capitalの創業者はコインベースの最初の社員の一人「Olaf Carlson-Wee」氏で拠点も同じくサンフランシスコ)

ただ、当時からの状況は機関投資家側にとってトライアルに近い感覚であると思われるので、規制方針が明確化して、流入が本格化することができれば雪だるま式に増加するかもしれません。そういった意味では総額よりも10社のうちほとんどがクリプトファンドだったのか?など機関投資家の内訳の方が気になるところです。

以下、あくまで参考ですが。

運用会社大手のブラックロックは7兆ドル規模の資産を運用しており、もし同社のカストディを行うとなれば1社で数十億ドル規模の預かり資産が発生することも少なくありません。JPモルガンが1兆ドル規模の契約を結んだというニュースもあります。
(※ブラックロックは機関投資家の運用資産をさらに束ねているという側面もあるので一概に単一の機関投資家の枠にいない)

国内で目新しいものだと、92億円の赤字を出した農林水産省管轄の官民ファンドが300億円ほどで政府系ファンドとして総額4兆円規模下です。
老後資金が2000万不足する!で話題の年金運用の場合は、150兆6000億円程度で米中貿易摩擦による株価下落の影響による評価損だけで14兆8000億円とかいう数字が出てきます。(2018年12末年金運用実績
不動産投資で向きが違いますが三菱地所が手掛ける東京駅前に390メートルの摩天楼を作ろうという構想の再開発は1兆円規模です。

世界の総額だと、先進国の上位機関投資家による総額が30兆ドル規模、世界中の主要な大手運用会社で80兆ドル~100兆ドルに届くか届かないかになります。世界GDPが80兆ドルなので、如何に世界が機関投資によって動いているかが分かると思います。

増加ペースは急伸している?

コインベースは5月中旬に10億ドルを超えたと公表しています。開始した昨年7月から数えて10か月目に10億ドルに到達したことになります。
ということは、前回の10億ドルの発表から1か月余りで3億ドルの増加傾向にあるということです。
20億ドル到達が視野に入っているとする情報が本当なら、預かり資産の総額は機関投資家の運用水準から考慮するとまだまだですが、規制方針が不透明な状況下としては、直近1カ月の増加ペースとして3億ドルは順調と言えるかもしれません。

ただし、不安要素もあります。一番は各国の規制方針の着地と法整備の時期です。長引くと機関投資家の参入時期もそれだけ遅れ、事業体力的にも苦しくなります。後発の仮想通貨カストディアンに追い付かれる危険も高くなります。
コインベースは昨年10月に機関投資家向けファンドを終了させ小売りに注力すると発表しており、機関投資家向けの金額規模がかなり苦しい状況であった事が窺えます。
OTC取引デスクについても、一時は機関投資家向けとしてゴールドマン・サックスなど期待されましたが、実情としては機関投資家は伸び悩み、OTC取引は個人と法人調達向けでの拡大が主になっています。様々な状況が従来の機関投資家の参入が未だ進む段階にない事を示しています。
(※OTC取引:Over The Counter、カウンター越しでの対面取引。金融では大口取引を主に指すが、個人取引は全てOTCとなる。中国本土ではWeChat(微信)などメッセンジャーを介したOTC取引が盛ん。

また、今年の4月にはコインベース・カストディの最初の顧客の1社として上述した「Polychain Capital(ポリチェーン・キャピタル)」が運用資産残高を3月末時点で5億9150万ドル(約640億円)としており、2018年8月の開示資料による9億6780万ドルから4億ドル近くも縮小させています。
生粋の仮想通貨関連ファンドが運用実績を示せていない状況は、参入の機会を窺っている従来の機関投資家から冷ややかな目を向けられかねません。

最後に、一番の不安要素は、増加した預かり額が2018年末~年始からのビットコイン価格上昇の影響で増加しただけのケースです。この場合、営業による顧客獲得の結果として成長したとは言えませんから、実態としてはゼロ成長という見立てになります。

以上のような点を踏まえて、今後出てくる発表を注視すると、米国の仮想通貨カストディサービスの風向きと機関投資家の参入事情が正しく見えてくる気がします。

[参考:]
coinbase Custody(英文)

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